【あらすじ】
本書は箱男専用ダンボール箱の作り方から始まる。箱男はダンボールに開けた窓から世界を覗く。ある日、町をうろつく箱男は一人の看護婦と贋箱男に出会う。
「箱男」は一般的に理解されている『小説』ではない。なのであらすじが死ぬほど書きにくい。
阿部公房の哲学を箱の中に放り込んで、時々中身を確認しながらいい感じになるまで振り回した結果、出てきた物が箱男だったのだろう。場面はコロコロと変わり、真に著者の伝えたい事を理解していないと意味不明なだけの脈絡のない文章は、ひとつの小説が出来上がる前の『下書き』を思わせる。
少し哲学的な話になるけど、世界は物によって出来ているわけではなく、認識によって出来ている。認識とは、例えば「そこに石がある」とあなたが思う事。「そこに石がある」と誰も認識出来なければ、世界にとってそこに石はないのである。
あなたの読んでいる小説の登場人物が、自らが小説の中の登場人物であると認識するとどうなるだろう。しかも、あなたが読んでいる事に気づいたとしたら。本を閉じ、お茶でも飲みながら『小説を読んでいる自分』を意識すれば、なんて事無いメタフィクション的手法で片が付く。しかし小説を読んでいる間、読者は紛れも無い小説の登場人物となる。
「箱男」ではこの見る事、見られる事の逆転を、文章のもたらす風景のみならず、文そのものを意識させる事で表現している。ドラマや映画を見て楽しむように、別世界への妄想を楽しみたい人には絶対に薦められない。もっと深いところ、文学が成す面白さを楽しみたい人には是非お勧めしたい。
読み終わった瞬間の感想は「頭が痛い」。もう内容よりまず、それ。
今回はお酒を飲みながら書いたからもうわけがわからない内容になってそう。でも見直さない。
「過去は忘れる為にある」。ここ、テストに出ないよ。
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