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よくわからない物と電子機器とゲームが好きな管理人が、アマゾンで買ったり見つけたりした物をレビューしたり愚痴ったりしてるだけのブログ

あまぞんな日々

   

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本【「犯人に告ぐ」 雫井脩介著】



出版は双葉文庫。

 『人通りの多い駅前からはずれ、本流からおこぼれを預かる毛細血管のような脇道の一つを進むと、唐突に現れる古い木造建築。0.1円であっても消費税を切り上げ請求してくる婆さんが営む本屋だ。
 この本屋の婆さん、なかなか曲者で、いつ何時訪れてもレジカウンターに収まり酢昆布を食べながらテレビを見ている。そして客の気配に気づくと、決まって和紙を握りつぶしたような顔で威嚇してくるのだ。その瞬間、ある者は立ち読みを諦め、ある者は、つまりこれは私なのだが、まるで店から退場する権利が欲しいかのように、そそくさと目に付いた文庫本を手に取る。

店の敷居を一歩でも跨ぐと、そこはもう婆さんのテリトリーなのだ。

 レジに文庫本を持っていくと慣れた手つきでカバーを被せ、笑みとも苦虫を噛み潰したともとれぬ表情で、一円余分に請求してくる。ここで小銭を出すのにもたつけば、「舌打ち」で散々殴られる破目になるから、客は事前の準備をもって手早い支払いを強いられる。そのくせ会計の合間に、少しでも相撲中継が白熱すると客を平然と待たせるというのだから理不尽だ。年をとると肝が据わると言うが、この婆さんを見る限り本当らしい。もっとも、客が発する小さな音の抵抗をも無視するのは耳が遠くて聞こえていないからなのかも知れないが。
 こんな調子でよく潰れないものだ。不思議ではあるが当然とも思える。年月を経て本の一部と化したように見える異質の本屋に魅力を感じ、消極的に店を支えている人間が私以外にもいるということなのだろう。

 私は本屋を出ると肺の空気を入れ替え、カバーに包まれた2冊の退場券に目を落とした。
「雫井脩介、犯人に告ぐ、か。面白いのかな?」』


「犯人に告ぐ」を買うまでの経緯をちょっと小説風に書いてみた。実話なんだけどね。

【あらすじ】
当時、神奈川県警の管理官であった主人公は、相模原市で発生した児童誘拐事件の指揮をとる。しかし捜査は最悪の方向へと進み、失態を演じた主人公は神奈川県警を追われた。-それから6年の時を経て、川崎市で児童連続殺人が発生。姿の見えぬ犯人に翻弄される神奈川県警はテレビ番組を利用した劇場型捜査の主役として、かつての管理官を再び表舞台へと呼び戻す。


とにかく読みやすかった。文量としては上巻下巻合わせて750ページ程度と、決して少なくはないのだけれど、なんだかすごくあっさりしている。全体通して当たり障りない無難な事実描写に終始している印象があり、言葉や行動の裏を読む必要がない。楽と言えば楽だし、劇場型捜査という題材は面白いので読み進めるのは苦にはならず十分に楽しめる。ただ本当に軽い。例えるならばJ-POPとクラシックの違いだろうか。ちなみに最近読んだ阿部公房の『箱男』は民俗音楽。私が出だしに書いた小説もどきはさしずめボイスパーカッションだろう。どういう意味かは誰にもわからない、私も含めて。

何処かのレビューで誰かが言っていたけれど、「映像向き」まさにそれだと思う。あいにく豊川悦司が演じる実写版は見ていないので、事実映像に向いていたかは知らないけど、とんでもなく原作主人公のイメージと重なるハマリ役である事は疑いようがない。


「婆さんに告ぐ、そろそろ消費税切り上げをやめてくれっ・・・やめてください」
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